残業代の計算方法
そもそも、残業代は、どのように計算されるのでしょうか?
基本的なことですが、残業代の計算方法を正しく知ることは、残業対策を検討する上で大事なことです。
残業代は、以下の計算式によって算出します。
残業対策とは、残業代の計算式を構成する、基準内賃金、月平均所定労働時間、割増率、時間外労働時間とは何かを理解し、そのひとつひとつに対して、具体的な対策を打つことです。
残業代の計算式
残業代 =
基準内賃金 ÷ 月平均所定労働時間 × 割増率 × 時間外労働時間数
残業代計算における端数処理
残業代を計算した結果、端数が生じることがよくありますが、残業代の端数処理方法については、国から明確なルールが示されています。
そのルールによれば、次のような端数処理をすることは認められており、残業時間や賃金を切り捨てても法律違反とはなりません。
時間計算について
1か月の残業時間(時間外労働、休日労働及び深夜労働の各々の労働時間)の合計に、1時間未満の端数がある場合
30分未満の残業時間を切り捨てる
30分以上の残業時間を1時間に切り上げる
例)例えば、1か月の残業時間の合計が、15時間25分だった場合
25分という端数は30分未満なので、これを切り捨てて、残業時間を15時間として計算しても違反ではありません。
※注意
端数処理が認められているのは、「1か月の残業時間」であり、「1日の残業時間」ではありません。1日の残業時間で、30分未満を切り捨てることは違反となります。
賃金について
1時間あたりの賃金額及び残業代に、1円未満の端数が生じた場合
50銭未満を切り捨てる
50銭以上を1円に切り上げる
1か月の残業代(時間外労働、休日労働及び深夜労働の各々の残業代)の総額に、1円未満の端数が生じた場合
50銭未満を切り捨てる
50銭以上を1円に切り上げる
例)例えば、1か月の残業代を計算したところ、その合計が12,345円40銭となった場合
40銭という端数は50銭未満なので、これを切り捨てて、残業代を12,345円としても違反ではありません。
基準内賃金・基準外賃金とは
「残業代の計算方法」で確認した、計算式を構成する項目を、ひとつひとつを見ていくことにします。
賃金(給与)は、大きく分けて、基準内賃金と基準外賃金に分けることができます。
基準内賃金とは、残業代計算の基礎となる賃金、基準外賃金とは、残業代計算の基礎には含めない賃金のことです。
つまり、残業代は、賃金の総額を基礎として計算されるのではなく、賃金のうちの基準内賃金だけを基礎として計算されるのです。
労働基準法によれば、「割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令に定める賃金は算入しない。」と規定されています。ここに規定されている家族手当、通勤手当などは、労働に対して支給されるものというよりは、従業員の個人的事情により支給される賃金なので、残業代の計算の基礎に含めない取り扱いになっています。
なお、厚生労働省令に定められている基準外賃金とは、以下の7種類の賃金です。
基準外賃金(残業代計算の対象から除外される賃金)
通勤手当
家族手当
別居手当
子女教育手当
住宅手当
臨時に支払われる賃金
1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
ただし、扶養家族の人数に関係なく一律に支給される家族手当、通勤距離に関係なく一律に支給される通勤手当などは、名称が家族手当や通勤手当であっても、従業員の個人的事情により支給される賃金とはみなされないため、基準外賃金には該当しません。基準外賃金に該当するか否かは、その名称ではなく、実態で判断されます。
基準内賃金とは、賃金総額から基準外賃金を除いた、残りの部分となります。
月平均所定労働時間とは
所定労働時間とは、会社が定める労働時間のことです。
(詳しくは、「労働時間の原則」をご参照ください。)
月平均所定労働時間とは、1年間の合計の所定労働時間を、12(1年の月数)で割り、1か月あたりの平均の所定労働時間を算出したものです。
1年の中には、31日まである月もあれば、30日や28日までしかない月もあります。各月の残業代の計算方法にバラツキが生じないようにするため、わざわざ「月平均」という考え方をするのです。
月平均所定労働時間は、以下の計算式によって算出します。
なお、以下の計算式の「(365日−1年間の休日合計日数)×1日の所定労働時間」で算出した時間のことを、年間所定労働時間と呼びます。
この年間所定労働時間を12で割ったものが、月平均所定労働時間になります。
月平均所定労働時間の計算式
月平均所定労働時間 (365日(※)−1年間の休日合計日数)×1日の所定労働時間数÷12か月
※閏年は、366日として計算
例1
例えば、「1日の所定労働時間が8時間、年間260日勤務(休日105日)」の会社の場合、
(365日−105日)×8時間=2,080時間・・・・・年間所定労働時間
2,080時間÷12か月=約173時間・・・・・月平均所定労働時間となります。
つまり、この例のような会社では、残業代計算の際の月平均所定労働時間は、173時間となります。
(約173時間は、実務上は173時間ちょうどとして計算します。)
例2
これが、例えば、「1日の所定労働時間が7時間、年間245日勤務(休日120日)」の会社の場合では、
(365日−120日)×7時間=1,715時間・・・・・年間所定労働時間
1,715時間÷12か月=約142時間・・・・・月平均所定労働時間となります。
ここで、「残業代の計算方法」で説明した計算式を思い出してほしいのですが、月平均所定労働時間は、この計算式の中で分母となる(割り算する)項目であることが分かります。
つまり、基準内賃金、割増率、時間外労働時間が同じである場合、月平均所定労働時間が多い会社ほど、残業代(残業1時間あたりの単価)は少なくなり、月平均所定労働時間が少ない会社ほど、残業代は多くなる仕組みとなっています。
一般論ですが、中小企業では、1日の労働時間が長く、年間休日も少ない、どちらかと言うと、「例1タイプ」の会社が多く、大企業では、その逆に「例2タイプ」の会社が多いと思われます。
市販のモデル就業規則などは、大企業向けに作られたものが主です。
中小企業が、市販のモデル就業規則をそのまま使用してしまうと、月平均所定労働時間が実態よりも少なく規定された就業規則をそのまま使ってしまうことになり、必要以上に多くの残業代を支払ってしまうリスクがあります。
割増率とは
残業代計算における割増率は、以下のように決められています。
時間帯
割増率
時間外労働(原則)
2割5分以上
時間外労働(月60時間を超えた部分)
5割以上
休日労働
3割5分以上
深夜労働
2割5分以上
深夜労働の割増率は、深夜の時間帯(午後10時から翌日午前5時までの間)に労働した場合に支払い義務が生じるものですが、この割増率だけは、他の割増率に加算されます。
したがって、労働時間が深夜の時間帯に及んだときは、結果的に以下のような割増率になります。
時間帯
割増率
時間外労働が深夜の時間帯に及んだ場合
5割以上
時間外労働(月60時間を超えた部分)が
深夜の時間帯に及んだ場合
7割5分以上
休日労働が深夜の時間帯に及んだ場合
6割以上
時間外労働に関する割増率の規定が、以下のとおり変更になりました。
割増率の引き上げについて
○ 改正前(平成22年3月31日まで)
・ 一律 2割5分以上
○ 改正後(平成22年4月1日から)
・ 月60時間までの部分 2割5分以上
・ 月60時間を超える部分 5割以上
この法改正の目的は、割増率をアップすることにより、会社側の経済的負担を重くすることで、長時間労働を抑制することにあります。
なお、中小企業においては、当分の間、この法改正が適用が猶予されることになります。
※ 中小企業の定義については、以下をご覧ください。
中小企業の定義
小売業
資本金5,000万円以下 または 従業員50人以下
卸売業
資本金1億円以下 または 従業員100人以下
サービス業
資本金5,000万円以下 または 従業員100人以下
その他の業種
資本金3億円以下 または 従業員300人以下
時間外労働時間とは
時間外労働時間とは、言うまでもなく、いわゆる残業時間のことを指します。
ただし、時間外労働の割増賃金(2割5分増し以上)の支払い義務が生じるのは、法定労働時間を超えて労働した場合であり、所定労働時間を超えて労働した場合ではありません。
例えば、1日の所定労働時間が7時間の会社において、従業員が1日に2時間の残業をした場合
2時間のうちの1時間は、残業時間ではありますが、法定労働時間を超えない範囲内の時間であるため、割増賃金の発生義務は生じません。(割増賃金の支払いの必要はありませんが、通常労働分の賃金の支払いは必要です。)
残りの1時間については、法定労働時間をを超えて労働した時間であるため、割増賃金の支払い義務が生じます。
「残業時間」と言っても、それが法定労働時間に対する時間外労働時間なのか、所定労働時間に対する時間外労働時間なのかを、区別して考える必要があります。(詳しくは、「労働時間の原則」をご参照ください。)
なお、休日労働についても同様のことが言えます。
労働時間に、法定労働時間と所定労働時間があるように、休日にも、法定休日と所定休日があります。(詳しくは、「休日の原則」をご参照ください。)
休日労働の割増賃金(3割5分増以上)の支払い義務が生じるのは、法定休日に労働した場合だけであり、所定休日に労働した場合には割増賃金の支払い義務は生じません。
ただし、所定休日に労働することにより、「週40時間」という法定労働時間を超えて労働することになる場合は、法定労働時間を超えて労働した場合の割増賃金(2割5分増以上)の支払い義務は生じることになります。