変形労働時間制を導入する
変形労働時間制は、一定期間内の労働時間を平均して、週40時間以内とすることにより、残業代(割増賃金)を支払うことなく、特定の日や特定の週に、法定労働時間の原則を超えて労働させることができる制度です。
この制度により、業務の繁閑に合わせて労働時間を設定すれば、時間外労働(残業)を削減することができます。
変形労働時間制には、次の4種類があります。
変形労働時間制の種類
- 1か月単位の変形労働時間制
- 1年単位の変形労働時間制
- 1週間単位の変形労働時間制
- フレックスタイム制
厚生労働省の過去の就業条件総合調査によれば、変形労働時間制を導入している会社の割合は54.2%。種類別(複数回答可)の導入割合でみると、1年単位の変形労働時間制は35.6%、1か月単位の変形労働時間制は15.5%、フレックスタイム制は6.1%となっています。
比較的導入割合の高い、1か月単位の変形労働時間制、1年単位の変形労働時間制について、以下に詳しく記していますのでご参照ください。
<1か月単位の変形労働時間制>
1か月単位の変形労働時間制とは
1か月単位の変形労働時間制の要件
変形期間における法定労働時間の総枠
1か月単位の変形労働時間制において時間外労働となる時間
<1年単位の変形労働時間制>
1年単位の変形労働時間制とは
1年単位の変形労働時間制の要件
1年単位の変形労働時間制における労働日の決め方
労働日数・労働時間・連続労働日数の限度
区分期間を設ける場合
1年単位の変形労働時間制において時間外労働となる時間
中途採用者・中途退職者の取り扱い
残業代込みの賃金設計(定額残業代(固定残業代)の導入)
残業代込みの賃金設計(定額残業代(固定残業代)とは、賃金総額をそのままに、一定時間分の残業代を含んだ賃金となるように、賃金制度を変更することです。
一定時間までは、賃金に残業代が含まれている(別途残業代を支払う必要がない。)ので、会社は、残業代を削減することができます。
ただし、この制度が有効と認められるためには、一定の要件を満たす必要があります。
また、通常、この制度の導入は実質的な賃下げ、つまり労働条件の不利益変更となりますので、制度の実施にあたっては、原則として、従業員との同意が必要となります。(同意を得ることなく、労働条件を不利益変更する場合には、それ相応の合理性が必要になります。)
定額残業代(固定残業代)については、以下に詳しく記していますのでご参照ください。
<定額残業代(固定残業代)について>
定額残業代(固定残業代)とは
定額残業代制度の要件
定額残業代の類型・設定方式
定額残業代の計算方法
定額残業代制度における時間設定
定額残業代制度の注意点
定額残業代制度と労働時間管理
残業の事前申告制
残業の事前申告制とは、従業員が、時間外労働(残業)や休日出勤をする場合は、事前に上司に「時間外労働申告書」等の書類を提出することで申告させ、上司が残業を承認した場合にのみ、残業ができるようにすることです。
こうすることで、ダラダラ残業や、付き合い残業を抑制することができ、残業代の削減につながります。
この制度で注意すべき点は、残業を事前申告制とした場合でも、残業代を計算するときは、申告した残業時間ではなく、実際に働いた残業時間を基礎に計算しなければならないことです。
上司は、申告時間と実労働時間に大きなズレがある場合は、その原因を把握し、申告と実態が乖離しないように改善する必要があります。
また、残業を却下する場合は、ただ単に却下するだけではなく、実際に労働させないようにする必要があります。
この制度の下では、上司には、残業の可否を判断する能力、労働時間を管理・調整する能力が求められます。
なお、この制度は、上司が、常に、残業の有無及びその内容をチェックすることになるので、残業や長時間労働の実態を把握することになります。
従って、従業員の健康管理や過労等の防止、および、業務におけるムダの改善・効率化につながるというメリットもあります。
始業・終業時刻の繰り上げ・繰り下げ(時差出勤制度)
始業・終業時刻の繰り上げ・繰り下げ(時差出勤制度)とは、1日の労働時間はそのままに、業種により勤務する時間帯(始業時刻・終業時刻)を変える制度です。
例えば、ある会社において、営業職は、「夕方以降の時間帯が忙しく、午前中はそれほど忙しくない」という場合・・・、営業職の労働時間を、事務職と全く同じように、「朝から夕方まで」とすると、営業職の夕方以降の労働時間に対して、残業代が発生してしまいます。
そのようなときは、業種により、始業・終業時刻を変えて、時差出勤させると効果的です。
( 具体例 )
<時差出勤制度の導入前>
事務職も、営業職も
・ 始業時刻 : 8時30分、終業時刻 : 17時30分( 休憩1時間 )・・・所定労働時間8時間
この場合、例えば、営業職が、19時30分まで労働した場合、2時間分の残業代が発生します。
↓
<時差出勤制度の導入後>
・ 事務職 : 8時30分~17時30分( 休憩1時間 )・・・所定労働時間8時間
・ 営業職 : 10時30分~19時30分( 休憩1時間 )・・・所定労働時間8時間
というふうに、1日の所定労働時間は8時間のまま、業種により始業・終業時刻を変えると・・・、営業職の、17時30分から19時30分まで間の労働に対して残業代は発生しません。
この制度は、必要な時間帯に、必要な人員を確保した上で、残業代も削減することができます。
振替休日の活用(振替休日と代休との違い)
振替休日の活用は、従業員を休日労働させる必要がある場合の残業代削減に効果的です。
振替休日とは、休日労働する日の前日までに、振り替えるべき日を指定して、対象となる従業員に伝え、休日と労働日を入れ替えることです。(事後に伝えた場合は、振替休日とはなりませんので注意してください。)
また、この制度を導入するには、就業規則等において、「業務の必要性に応じて、休日を振り替えることがある。」旨を定める必要があります。
原則では、休日労働については、従業員を法定休日に労働させた場合、会社は休日労働の割増賃金(3割5分増)を支払わなければなりません。
また、所定休日に労働させた場合でも、週40時間(※)の法定労働時間を超えて労働させた場合には、時間外労働の割増賃金(2割5分増)を支払わなければなりません。(詳しくは、「休日の原則」及び「時間外労働時間とは」をご参照ください。)
※ 商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業で、従業員数が10人未満の事業所においては44時間。
しかしながら、振替休日は、休日と労働日を入れ替えたにすぎないので、「休日に労働させた」ことにはならず、休日労働の割増賃金の支払いは必要ありません。
この制度のポイントは、振り替えるべき日を、休日労働した日と同一週内に指定することです。
他の週に指定すると、休日労働した週の労働時間は、週40時間の法定労働時間を超えてしまい、結局、休日労働の割増賃金(3割5分増)は支払わなくてよいものの、時間外労働の割増賃金(2割5分増)を支払わなければならなくなるからです。
なお、振替休日とよく似た制度で、「代休」という制度があります。
代休とは、休日労働した従業員に対して、休日労働した後に、日を指定して、代わりの休日を与えることです。
振替休日は、事前に、日を指定して、休日と労働日を入れ替える制度であるのに対し、代休は、事後に、代わりの休日を与える制度である点で、この2つの制度は違います。
代休では、「休日に労働させた」事実は消えませんので、たとえ代わりの休日を与えたとしても、休日労働した日について、休日労働の割増賃金(3割5分増)を支払わばければなりません。
振替休日と代休の違い
振替休日・・・事前に手続き。割増賃金不要。
代休・・・事後に手続き。割増賃金必要。
その他の残業代削減対策
その他の残業代の削減対策を、いくつか紹介します。
ここで紹介する対策は、すぐに実行に移せる、ちょっとした工夫でできる対策を掲載しました。
○ タイムカードを上司の近くに設置
始業時刻直前、終業時刻直後にタイムカードを打刻するように、上司が管理する。
○ パソコンの業務外での使用を禁止
ダラダラとインターネットで遊んでいるようなことがないように管理する。
○ 上司が率先して退社
帰りにくい風土を一掃する。
○ 1日の行動計画を発表させる
朝礼などで、1日の行動計画を発表させ、計画を遂行させる。
○ ノー残業デーを設ける
週に1日程度はノー残業デーを設ける。
○ 光熱費節約運動
残業代の削減により光熱費が節約できた場合には、インセティブで還元する。
○ 業務効率を人事評価に取り入れる
時間あたりの業績を人事評価の項目に入れ、効率アップを図る。 など